ツケマお化けに恋して
社に戻ってからも何だか仕事が手につかなくてぼーとしてしまっていた。


「美貴野どうしたの?さっき木村が来てたんでしょ?何かあった?」


「う…うん、ちょっとね……あっ稔来月からこっちに戻って来るって」


「へぇーそぅなんだ?で、どこ?」


「総務…」


「えっ総務?!」


「…色々あったらしい…」


「じぁーあの噂本当だったんだぁ?…ちょっと出ようか?」


あまり良い話ではないので、私達はいつもの非常階段の5階と6階の踊り場に出た。

ここは私達のさぼり場所だった。

10年も働いていると人に聞かれたくない愚痴もある。

宏海とはこうやって互いに励まし合って来たのだ。

やっぱり夏の非常階段は暑いなぁ…

たまに他の人も煙草を吸いに出ている人も居るが、さすがにこれだけ暑いと誰も非常階段へ出てくる人は居ないようだ。


「噂って?」


「う…ん、奥さんの実家資産家って言ってたでしょう?大阪支社が出してる旅雑誌のスポンサーだったらしいの…木村と奥さんの仲がおかしくなってからスポンサーを降りるって話が出てそれで大阪支社が木村を追い出すって噂」


「そんな…元はと言えば奥さんが悪いんじゃない!?」


「まぁどんな子でも自分の子は可愛いのよ」


そんなの酷い…酷すぎる…




< 31 / 103 >

この作品をシェア

pagetop