秘め恋シンデレラ~隠れ御曹司と甘く蕩けるKISS~
副社長は何をしに来たんだろ?
社長と仕事の話をせずに雑談ばかりして、副社長室に戻ってしまった。

私は給湯室のシンクで二人が飲んだコーヒーカップとソーサーを洗っていた。


麻生さんが無言で給湯室に入って来た。


「麻生さん、何ですか?」

麻生さんはカウンターに置かれたコーヒーサーバーを操作し、自分用のコーヒーを淹れる。

その間もひたすら無言。

彼が黙っている時は何かを考えている時。
こんな時は話しかけない方が無難。

最初は嫌な先輩だと思っていた。
でも、今の私は・・・


「あのさ・・・」

「はい?」

私は不意に麻生さんに声を掛けられ、持っていたカップを落としてしまった。

「!!?」

私は大慌てでカップを拾いあげる。

「あーっ!?」
私の頓狂な叫びが辺りに響いた。

「どうした?」
麻生さんの切れ長の瞳も大きく開く。

「社長のお気に入りのマイセンのカップにヒビが・・・」

私は麻生さんにヒビの入ったカップを見せる。

「…このカップは1客11万するんだぞ」

「ええ~っ!!?11万!!?」

「他のマイセン磁器とは異なり、この自然主義シリーズは高いんだよ。沢山のフラワーぺインター達が居るけど、このモチーフの花を描けるのは数人なんだ」
「へぇー」

私は感嘆して、カップに描かれた黄色の薔薇と蝶の絵を見つめた。

「ここは正直に話そう」

「でも・・・」

「洗い物をしているお前に声を掛けた俺の責任だ」





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