ライ・ラック・ラブ
「佐野さん、秋永さん。こんにちは。いつもご苦労様です」
「こんにちは。春花お嬢様」

まずは一旦立ち止まって、出入口にいる警備員の佐野さんと秋永さんに挨拶をした。

社員さんに挨拶をする時、私は必ず名字も添えて呼んでいる。
その場に二人以上いらっしゃる場合は、勤続年数の多い方から先に。
名字でもいいから名前を添えると、社員さんの反応が良い意味で違う。
だから父は、「名前を覚えなさい」とアドバイスをしてくれたのだ。

私はニコッと微笑みながら、開いた自動ドアの中へと歩を進めた。

周囲の程良い喧騒に混じって、私はヒールの音を白い大理石の床にコツコツと静かに響かせながら、受付へと歩く。
すると、3人並んで座っている受付嬢のうち、一番右に座っている女性が、パッと立ち上がった。
あの人は…勤続2年目で私と同い年の吉田さんだ。

「いらっしゃいませ」
「こんにちは、吉田さん。父に頼まれて、書類を届けに来たの」
「かしこまりました。少々お待ちいただけますか?」
「はい」

吉田さんが内線で確認を取っている間、私は周囲をぐるっと見渡した。

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