ライ・ラック・ラブ

まずは弁護士が必要だ。
でも、父の知り合いや父の会社に関わっている弁護士さんに、書類作成を頼みたくない。
父に知られるわけにはいかないから。

そのとき、私の脳裏に思い浮かんだのは、弁護士の佐田秋子さんだった。

チャリティーイベントのスタッフとして、時々手伝いに来てくれている秋子さんなら、安心して任せることができる。
何より秋子さんは父の知り合いではないし。

電話をかけた10分後には、私と佐久間さんは、秋子さんの自宅に着いていた。

そこで大まかな事情を説明した私は、秋子さんのアドバイスも含めて、私と妹たちの財産を守るための書類を作成してもらうことになった。
私たち4姉妹がすでに持っている財産に、正さんが絶対手をつけられないよう、その旨の項目もちゃんと書いてもらった。

「これでよし、と。じゃあ書類作成しておくわね」
「ありがとうございます。明日、署名をしに、妹と一緒に事務所へ伺います」
「はーい。書類は今夜のうちに作っとくから、何時に来てもらってもいいわよ。でも私が事務所にいるのは午後6時までだからね」
「分かりました。来る前にご連絡します」
「オッケー。じゃあ気をつけて。何かあったら、追加事項でもいいから、とにかく電話するも良し。うちに来てもいいんだからね」

威勢の良い中に、ちゃんと気遣いがこもった秋子さんのいつもの言い方が、今日は普段以上に心に沁みる気がする。
私は「ありがとうございました」とお礼を言うと、秋子さんのお宅を後にした。

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