好きやった。
・ウチとアイツとあの子


 ×××



……ああ、もう、ほんと。

毎日毎日、勘弁してほしいんやけどなあ。


部活が終わった午後6時。

更衣室で着替えを済ませて、さあ帰ろうと体育館の玄関に向かったとき。

見たくない二人の姿が視界に入り込んできて、一人心の中で嘆いた。


出入り口のガラス扉の、その向こう。

そこに立っていた小柄な女子に、アイツが駆け寄っていくのが見えた。

そしてお互いに微笑みかける姿が、透明な隔て越しに見える。見たくもないのに、憎たらしいほどにはっきりとよく見えていた。

いっそウチにだけあの二人の姿を見えない特殊能力があれば、どれほどよかったことか……。


「……はあ」


うつうつとした気持ちをが体の奥深くに溜まっていくのを感じながら、視線を二人から靴箱へと移した。

こんなことで、いちいちショックを受けるわけにはいかない。


いい加減、あの二人の姿を見ても平常心で
おれるようにならんとなあ……。

そうしやんと、ウチの心がもたん。

平日の部活終わりは、嫌でもあの光景を見なくちゃいけない。しかも、それに終わりが来るとは限らない。

だから早く、慣れやなあかんよな。


「美亜(ミア)、おまたせ。結構待ったか?」

「ううん、そんな待ってへんよ」

「ほんまかー? 寒さで鼻赤くなっとるやん」


ガラス扉は閉まっているけど、二人がそのすぐそばで話しているせいで、会話の内容は扉の内側にいるウチの耳にもすべて入ってきていた。

意識したくないのに、耳が勝手に二人の言葉を拾う。

それが煩わしくて、振り切るように、靴箱から取り出したスニーカーに乱暴に足を突っ込んだ。


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