好きやった。
「……ごめん、言いすぎた」
彼女のせいで、月島に傷ついてほしくなかった。
それゆえに無我夢中で言った言葉だけど、結局はそれで月島に嫌な思いをさせてしまった。そんな自分が許せなくて、自然と謝っていた。
自分の願いと相反する結果を招いてしまうなんて、ウチは何をやっとるんやろう……。
あの子のこと、えらそうに言えやんやん。ウチの方が最低や。
「……ええよ、別に謝ってくれやんでも。言うたやろ? 井ノ原の気持ちはわかったから、って」
俯いたままだったウチの頭に、ぽんっとぬくもりが乗せられた。
驚いて、目線をゆっくりと正面に向ける。
出会った頃よりも20センチ以上背が伸びた月島。
そんな月島がゆるやかに口角を上げてウチを見つめながら、大きな手のひらをウチの頭の上に置いていた。
「井ノ原は、落ち込んどる俺を庇うためにああ言ってくれたんやろ? 美亜のこと悪く言われるのは嫌やけど、ちゃんとそれが俺のためやってわかっとるから。……やから謝らんでええよ。むしろ、ありがとな」
月島は最後まで怒った素振りを見せず、本当に優しげな声でそう言った。
それから小さな子供をよしよしと宥めるように、ウチの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「……っ、」
バカやん、月島。
彼女のことを守って、そのくせウチにまで優しくするなんて。反則やわ。
……でも、嬉しかった。
嫉妬まみれの心の中にある、純粋に月島を想う気持ち。まだどす黒く染まっていないそれを汲み取ってくれたように思えたから。
それだけでウチは救われる。
ぎゅっと胸が締めつけられて言葉が出なかったウチは、再度俯くとこくんと頷くことで月島に答えた。