カリスマ社長に求婚されました

まさか、奈子さんが未練を持っていたことを知っていたとか……？

ううん、それは違っていてほしい。

だって、分かっていて仕事を組むのは女心としては複雑だから。

すると、エンジンをかけて車を走らせ始めた優一さんが、ため息交じりに首を横に振った。

「分からない。元々、あけっぴろげな性格だから、特に意味はなく話のネタに言っているんだろうけど……」

「そ、そうなの？ もしかしたら……優一さんに未練があるとか……？」

彼がウソをついているようにも見えず、さらに探りを入れると、優一さんは一瞬私を見て「まさか」と驚いた。

「奈子とは、話し合いで別れたんだし、だいたい別れる頃には、お互い気持ちが冷え切っていた。未練なんて持つはずがないよ」

「だけど、奈子さんは優一さんに会うと、あんなに楽しそうだったじゃない」

あんな戦線布告をされなくても、奈子さんの気持ちを疑っていたかもしれない。

すると優一さんは、苦笑いをしながら言った。

「別れたあと、ふたりで気持ちがスッキリしたって実感し合ったんだ。オレたちは、恋人同士より、友達関係の方がしっくりくると……。だからだと思う。奈子もオレに気兼ねがないんだよ」