カリスマ社長に求婚されました
「私情ですか……?」

いったいどんな私情なのか、それはそれで謎めいていて、結局なにも分からない。

優一さんが反対する理由を、私の才能以外で考えるなら、他になにがあるのだろう……。

悶々と考えている間にも、ランチのメイン料理が運ばれてきて、とりあえず手を伸ばす。

白身魚のクリーム煮とかで、ワインの香りがほのかに匂い、食欲がそそられそうだ。

それなのに、私の頭の中は優一さんの気持ちが分からないままで、どこかスッキリせずランチに集中できない。

「なあ、茉奈ちゃん。本当にやってみる気があるなら、接客のセミナーを紹介しようか?」

「セミナーって、そんなのがあるんですか?」

柊也さんが思い出したかのように言ってくれ、私は話に食いついた。

「ああ。有名な女性講師がいるんだ。たしか、蓮士の知り合いで……。ほら、中沢蓮士。先週、ellに来ただろ? あいつの知り合いなんだ」

「えっ⁉︎」

いい話だと思ったのに、よりによって蓮士さんの知り合いだなんて……。
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