カリスマ社長に求婚されました
郊外の教会での結婚式は、一日一組限定となっている。

優一さんはマスコミ対策や隠し撮り対策に、貸し切りができるこのヨーロピアン調の式場を選んでくれた。

それだけ警戒するには理由があり、マスコミに報じられた私たちの結婚は、思いがけなく大げさに拡散されてしまった。

なにより注目されたのが私の婚約指輪で、優一さんの手作りだと報じられている。

それも『ell』の刻印入りで、ひとつしかないもの。

それがいつの間にか、『幻のellの指輪』と言われるようになっていた。

「オークションだと、どれくらい値がつくか分からないなんて、下世話な話よね」

控え室でひとり、小箱に入っている指輪を見つめ独り言を呟いたところで、優一さんが入ってきた。

「なにをブツブツ言っているんだ?」

クスクス笑う優一さんは、薄いグレーのタキシードに身を包み、惚れぼれするほどに似合っている。

「うん、この指輪がねオークションにかけられたら幾らになるかって、ネットで書かれていて……。っていうか、優一さんなんでここに来てるの⁉︎」
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