恋を届けるサンタクロースvol.1~沙希~
恋を届けるサンタクロース
 今日はクリスマスイブ。街路樹に巻かれた青と白の電飾が交互に光り、デパートの壁には赤と緑のライトがモミの木の形に吊されて、ピカピカ光ってる。店先には大きなリースやツリー。どこを見たってイルミネーションだらけ。

 あー、やだ。立ちっぱなしで疲れた。ケーキ売りのバイトの契約が終わるまであと一時間。この全身トナカイのハズいコスチューム、早く脱ぎたいよぅ。

「ケーキはいかがですかぁ、ブッシュドノエル、雪だるまのチーズケーキ、アイスケーキもあるよ~。とってもおいしいよ~」

 あたしの横では、サンタクロースのコスチュームのおじさんが声を張り上げている。綿菓子みたいな白い髭と眉毛をつけて、赤い帽子を目深に被っているから、年齢不詳。でも、声からすると五十代くらい? リストラされて仕事がないから、今日こんなバイトをしてるとか?

 そんなことを思ってると、サンタクロースが「ほっほっほ」とアニメなんかでお馴染みの笑い声をあげた。やる気満々だな。

「ほら、トナカイさんもがんばろうよ。あと少しで完売なんだからさ」

 サンタクロースに声をかけられ、あたしは被っていた角付きの茶色い帽子を引き下げた。

 こんな格好、高校の友達に見られたら恥ずかしい。
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