好きって言っちゃえ

「舞もねぇ…。親の贔屓目だけど、悪い子だとは思わないのよ」

「いえ、舞ちゃんは、よく働いてくれるし、正直だし、いい子ですよ」

「ありがと。でもね〜、意固地なのよね」

「まぁ、それは否定しませんが」

「お父さんと愛が胃癌で死んじゃったから、自分も近いうちに胃癌で死んじゃうに違いないって思い込んでるから、結婚しない主義なんて言って、ほんと馬鹿なんだから。健康診断だって、1度も引っかかったことも無いのに」

「舞ちゃんにはよほど、僕と哲平がかわいそうに見えてるんでしょうね」

「え?」

「残された家族がかわいそうだと思って、結婚しないなんて言ってるんでしょう」

「剣二さん…」

「もちろん、愛が亡くなった事は悲しい事でしたが、愛は僕に哲平を残してくれたし、お義父さんには一生の仕事も与えてもらえた。決して、かわいそうではないんですけどね」

と、剣二は神妙な表情になった悦子に苦笑いを向けた。


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