好きって言っちゃえ
救急病院へ

司会の女性はすぐにタクシーの手配に行き、光俊は、舞を心配そうに見た。

「大丈夫っすか?立てますか」

「・・・」

「まさか、あの人から逃れるための演技じゃないっすよね?」

「ヴヴヴ~・・・」

本気の胃痛の時にそんなことを言う光俊を怒りのこもった恨めしそうな目で見る舞。

「ああ、分かりました。俺につかまってください」

光俊は、舞の腕を持ってゆっくり席から立たせ、目立たない様に何気なく寄り添うようにそっと会場を出た。外では、司会の女性がタクシーの横で待っていた。

「タクシー来てるわよ」

「すみません」

舞を先にタクシーに乗せ、自分も乗り込もうとする光俊に司会の女性が声を掛けた。

「頼んだわよ」

「はい」

「こういう時にビシッと男らしいとこ見せたら女はグッとくるんだから、頑張りなさいよ」

と、バンっと叩かれた。

「イテ。じゃ、すみませんが失礼します」

光俊は肩をさすりながら、ひょこっと頭を下げて、タクシーに乗り込んだ。光俊が乗り込んだのをミラーで確認した運転手がドアを閉めると、声を掛けてきた。

「じゃ、出発しますよ」

「あ、はい。えっと、行先は~」

光俊があたふたしていると、運転手が、車を出しながら、

「行先は緊急病院という事で、お伺いしてますし、タクシーチケットもお預かりしてますから、ご心配なく。それより、彼女をちゃんと見てあげてくださいよ」

「あ、はい。ありがとうございます」

光俊はタクシー運転手にとりあえずお礼を言うと、胃を押さえて前かがみになりビクともせずにいる舞の方を見た。

「大丈夫っすか?」

「・・・」

青ざめている舞は、最早、唸り声を出す気力もなく、顔を上げる状態でもないようで横目でチラリと光俊を見た。

「大丈夫じゃないっすよね・・・」

と、光俊が引いた時、痛みが突然和らいだ舞は、ゆっくり態勢を真っ直ぐにして、背もたれにすがった。

そんな舞を見て、光俊が、もう一度声を掛けた。
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