ビタージャムメモリ
「香野さんがショートカットを作ってくれたようなものです」
「たまたまです、あの」
そうだ、と私は下山さんの話を聞いて思いついたことを話した。
「これから、発表会に向けた定例会を行いたいんです、週一で。全員集まるのが厳しければ、TV会議でもいいので」
「いいですね、必要だと思います。プロジェクトの定例会の前後でしたらこちらはほぼ全員揃います、ただそれは隔週なので」
「私がそちらに伺うことも可能ですし」
「都度相談しましょう、初回はちょうど今週、できますね。水曜に全員本社に来る予定です」
手帳を開いて先生がうなずいた。
先生と毎週、必ず会える。
私は気持ちが高まり、そして歩くんに言われたことを思い出し、えいっと勇気を振り絞ってみた。
「あの、その後、食事でもいかがですか」
「え?」
きょとんとされてから、言葉足らずだったことに気づく。
わああと動転しながら、慌てて言い添えた。
「あの、もちろん、皆さんでって意味です、せっかくのキックオフですし。このへんけっこういいお店あるので、私、ご案内します」
…下心が透けていただろうか。
本当なんだけど。
先生たちの事業所のある場所は、都心から外れた場所にあり、楽しみどころがあまりないって聞く。
だからこういう機会に、おいしいものでも…。
そう思ったのも、本当に本当なんだけど。
なんだけど…。
「お気遣いなく」
うつむいた私に降ってきた言葉は、ぐさっと心を刺した。
スカートを見つめて、どう取り繕えばいいか探す。
「あっ、あの、そうですよね…」
「仲間たちが喜ぶと思います、ちゃんと自分たちで払わせますので、部署の費用などは、どうか用意しないでください」
「えっ?」