うそつきハムスターの恋人
「すごい」

鳥居を越えると、思わず私は歓声をあげた。

上を見上げると、真っ赤な紅葉がまるで空を覆い尽くすようだ。

下にも真っ赤なじゅうたん。

落ち葉が踏む度に乾いた音を立てるのもいい。

「しずく。落ち葉ついてる」

夏生は笑いながら、私の髪に手を伸ばした。

夏生は、黒のピーコートに細身のカーキのパンツ、コートの中はボーダーのニットを着ている。
どれも、背のすらっとした夏生によく似合っている。

石畳の参道は、まるで森林の中を通るように社殿まで続いていた。

手水舎を過ぎると、頂上が見えないほど長い階段が見えてくる。

「しずく、これ登れる?」

夏生が私に試すような視線を投げ掛ける。

「当たり前だよ、こんなの余裕」

私が強がりを言うと、夏生は「じゃあ行こうか」と私の手を取って、階段を登り始めた。
階段は石で作られていて、段差がちぐはぐだ。

「海外からの観光客ばっかりだね」

さっきから、すれ違う人はほとんどアジア系とおぼしき観光客ばかりだ。
通りすぎるたび、独特の香水の香りがする。
彼らの国の言葉があちこちで飛び交っていた。

巫女の格好をした女の人が竹箒で階段の落ち葉を掃除している。

「しずく、あと少し。がんばれ」

夏生にはげまされ、なんとか登りきると、膝ががくがくしている。

「帰りもあるのに……。大丈夫? おんぶしようか?」

夏生がからかうように私を横目で見た。

「腕を骨折してる人におんぶしてもらうなんて、さすがに悪いよ」

「折れてなかったら、おんぶされるつもりだったんだ」

夏生が思いきり吹き出した。

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