夜闇に咲く


「……あれはないよねぇええ……」


日和は再び屯所の外を歩いていた

そう、土方さんに総司のことを聞かれてしまった私は

「そ…っ、そ、そろそろ、……お、お花摘みにいってきますね!!!!!!!!!では!!!!!!」


という何とも苦しいとしか言いようのないことを言ってあろうことか屯所から出てきてしまったのだ

総司を探し回っていて外を見ていなかったからか空が赤らんできていることに気づかずに出てきてしまった。

「はぁ……」

もとはといえばあんなところで話しかけてきた龍馬が悪い……新撰組にいながら龍馬とかかわった僕も悪いのか?

「うううーん、はぁああ、どうしよーよ」

今は、もらってから片時も離さず腰に差している村正しか持っていない、

今から総司を探してもいいのだが入れ違いになっているかもしれないし、第一どこにいるのか見当もつかない

このまま、夜になるのを待って、龍馬と……


そこまで考えて日和は一番大きいため息をついて座り込んだ


どうすればいいのさ、もう



「こんなところで座り込んで通行人の邪魔だとか思わないわけ?」


突然背中のほうから声がかかった

「っ!!!」


思わず立ち上がって振り返ろうとするが頭を振り返れないように声の主に捕まえられてしまった

「ぅうっ!!!!」

「ねぇ、君は今からあいつのところに行こうとしてたの?」


頭を固定されて振り向くことも、顔色を見ることもかなわないまま答えを求められた


「ちが、……くも、ない、わかんない……っ」
ドンッ
直後、肩を掴まれたかと思うと背中にすごい衝撃を感じて少し目をつむってしまう
「うっ……っ!?」

目を開けると目の前に総司の顔があった
「君、さ、本当はどっちなの??僕らの敵なわけ?」
「違う……っ」

最初の総司に戻ってしまったみたいで、目の前の総司の目が、僕のことを敵だ、って言ってるような気がして、僕は耐えられえなかった


「じゃあなんだよ、何が目的なんだ??」


何が目的……って、僕だって、僕だってわからないのに、急にこんな時代に飛ばされて、一方的に新撰組に入らされて、訳わかんない禍罪とかいうものを祓わせられて、それで何が目的だ?

そんなの、





そんなの……っ




……意味わかんないよ。




「………か」
「は??」





「ぼくにわかるわけないじゃんか!!!!!!」

怒りがふつふつとわいてきて、もうどうにでもなれって感じだった、思わず手が出て、不意を突いたのは間違いなかったけど、僕のこぶしは総司の胸で止まって、総司はびくともしなかった。


「ねぇ……」
「君たちに何がわかるのさ!!!!僕のことなんて何も知らないくせに、みんなみんな勝手だよ……意味わかんない……僕が、何したの?なんでみんな僕ばっかり……なんで?やだよ、いやだ、ぜんぶや……っ」

「日和……っ!」

今度は無理矢理顔を胸板に押し付けられた

「やだ…っ、はなし、てよ…」

こんなんだったらいっそ逃げちゃえばよかったんだ……

「もう、もう僕がいる意味なんてないでしょ?…裏切られたでも何でも言っといてよ、僕は……もう」
「悪かったよ」

僕の頭を押さえつける手は、いつの間にか優しく上下に動いていて

肩をそっと抱いた

「……っ、総司」
「そんな顔、させるために言ったわけじゃなかったんだ、ちょっと嫉妬したんだよ、君が僕よりあいつを信用しているように思えて。それが、もしかしたらあいつ側についているのかも……って、」


そこまで言って総司は僕の顔を覗き込んできた

「……みるな……ばか」


柄もなく泣いてしまったのだ、そんなときに顔なんて見られたくないのは当たり前だろう、
覗き込んでくる総司の顔を手でグイっと横に向かす


何するんだくらい言ってくると思ったのに総司は背けさせてから手を口にもっていって、こっちを向かなくなった

「あ、う、……総司、そんなずっとそっち向いてなくてもいいよ、帰ろう」

そういって総司の手を引くと今度は総司が僕の目をふさいだ

「うわあっ……!?」

「勝手に見ないでくれる……?ほら、帰りたいんでしょ、行くよ」

どっちだよ、と思いながらもついていこうとすると、総司は少し先を歩きながらふと聞こえるかどうか位の小さな声でいったのだった


「日和もおんなのこってことか……」














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