愛してるなんて言わないで


「ねえ、結花…

恋人同士で別れて、次の恋に進むのは簡単なのに…

どうして

離婚となると、そんな簡単に次の恋に気持ちが向かないんだろうね…?」

子供がいなくても

戸籍というのはとても大きな物だ。


特に女の場合にはバツイチの経歴は、社会ではとても蔑まれた偏見を持たれる。



男よりも女のほうが離婚経歴は重たく見られる。



依子に結婚願望があまりないのは、永遠に連れ添う自信がないからかもしれないからかもと、以前、本人が話していた。




逆に私は一生連れ添う自信がたっぷりで結婚して破局してしまった。


もしかしたら依子のほうが一生の相手をちゃんと見つけられるのかもしれないと今は思う。




「子供ができると…男と女じゃあ、子供への愛が違うからじゃないかな?」


なんとなく答えた私の言葉に依子も小さく頷く。



「妹の私が言うのもなんだけどさ、お兄ちゃんは良い人だよ。」


「知ってるよ。

あんなに良い人…

私には勿体無い。」


「謙虚だね?」

その言葉に目が合ってくすりと笑う。

「謙虚な気持ちも大事だけど、結花?

お兄ちゃんの相手が友達のあんたなら私は賛成する。

味方になるよ?

いつでも相談しておいで。

結花、シングルマザーが幸せになったらいけない決まりはどこにもないからね。」



「…ありがとう。」





もしかしたら

依子はそれを伝えるために今日、私を誘ってくれたのかもしれない。


味方になる。


そんな言葉がどれほど私を癒してくれてるか…


きっと彼女は知らないに違いない。



< 64 / 142 >

この作品をシェア

pagetop