地味子さんの恋愛事情
Chapter3□甘い誘惑にご用心!
今月は私が給料明細を渡しに行く日である。

「すっかり冷えてきちゃったわね…」

秋らしくない冷たい風に薄手のコートの襟を立てると、並木道を歩いた。

春になると桜が満開になってキレイだと評判の並木道である。

しばらく歩いていると、プレハブが見えてきた。

本社からかなり離れたこの場所に建っているプレハブは、通販部コールセンターである。

ドアの前に立つと、コンコンとドアをたたいた。

「こんにちは、秘書課の名取桃子です。

今月の給料明細を届けにきましたー」

ドアに向かって呼びかけたら、
「はーい」

中から声が聞こえたのと同時に、目の前のドアが開いた。

そこから出てきたのは、彫りの深い顔立ちの男――内場くんだった。
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