ブレスフル クリスマス
-3-
「お疲れさまでーす!」

元気よく挨拶してお店に出る。
「透子ちゃん、今日も元気ええなぁ!」
マスターの奥村さんが笑顔でそう言う。
「さすがにマスターの元気には負けます!」
マスターはいつも元気で真冬でも半袖やねん。


私がこのお店でバイトを始めて3ヶ月――
きっかけは失恋やった・・・。

聡にフラれたあの日
失意のどん底に突き落とされた私は
どこへ行くでもなく街をふらふら歩いてて
ふと
『ブレスフル クリスマス』
っていう看板が目に入った。

「ブレスフルかぁ・・・今の私にはイヤミで残酷な看板やな・・・」

そうぽつりとつぶやいてたけど
なんとなく気になって
緑色の扉を開けて
そのお店に入ってみた。

『ブレスフル クリスマス』
――至福なクリスマス――

確かにその看板の通り
扉を開けた瞬間
ものすごく優しくて暖かい雰囲気が
そして、コーヒーのいい香りが
一気に私を包んだ。

店内を見渡すと、どこを見てもクリスマス・・・。
そんな街中のチャラチャラした感じと違って
たぶん、北欧の家庭のクリスマスを
イメージしてるんやと思う。
内装の壁や棚やテーブルは全部木製で
フェルトのサンタさんとか
木でできたトナカイとか
プラスチックのクリスマスツリーとか
たくさんのオーナメントが
そこかしこに置かれてたり
壁や天井からつるされてたりしてる。
お店の入口では私の腰くらいまである
サンタさんの置物が迎えてくれた。
間接照明が明るいでも暗いでもなく・・・
うまいこと取り入れられてる。
流れてる曲もクリスマスソング。
浮かれた中にも品があって
すっごい雰囲気のいいお店や・・・。
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