来世はおとぎで出逢いたい
来世はおとぎで出逢いたい




かちゃり、と小さな音を立てて、手のひらに包まれた拳銃が震えた。どこか遠くで、甘い珈琲の水面に唇を浸しながら、誰かが静かに、私とあなたを覗いていた。


「……泣かないで、」


涙が頬を伝って残した線を、あなたの指がゆっくりと拭った。あまりにも穏やかに微笑むものだから、瞳の奥がとにかく熱くて、涙を流す以外に術がない。

身体中の色んな痛みを全部含ませて、これでもかと泣いてみせるのに、まるで涙腺が壊れてしまったみたいに、次から次へと流れる雫は止んでくれない。

泣いたのは私。

引き金に指をかけたのも、あなたを裏切ったのも、欺いたのも、傷つけたのも、ここにある悲しみ全ての原因が、この身体から溢れて転がってゆく。

悪役は私、ただそれだけのことだったのに。


「躊躇わないで、引き金を引きなさい」


いつか私に「愛しているよ」と言ったのとまるで同じ声色で、あなたがそんな風に優しく優しく微笑うから、私は今にでもこの銃口を、自分の頭に突きつけてしまいたくて仕方なくなる。


嗚呼、これは悪夢だ。
< 1 / 2 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop