旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
 

そんなわけで、結城の財力をまざまざと思い知らされながら始まったパーティーは、テレビ・新聞各社マスコミに向けた婚約発表会見で幕を開けた。

クルーズ船内に設置されているスタジオで、私と颯は目も眩むほど大勢のカメラに囲まれた。国営から民放までズラリと並んだテレビカメラ、新聞社・雑誌社のフラッシュ。なんだかハリウッドスターにでもなったような気分だ。

まあ、颯の結婚ということは日本一のコンツェルンの相続問題に直結しているのだから、マスコミが騒ぐのも仕方ない。

それに私だってまがりなりにも国内大手シェア自動車会社の社長令嬢だ。

日本一の御曹司と大会社の社長令嬢の婚約発表とくれば、経済界隈だけでなくセレブリティな話題性だって十分に提供できるだろう。

事業の展望などの堅苦しい話題から、ふたりの微笑ましいエピソードまで。私と颯は完璧なスマイルと受け答えで、次々と記者達のインタビューを交わしていった。

ちなみに今日の私のいでだちは、淡いクリーム色のワンピースにグレーのジャケット。一見すると地味なくらいおしとやかに見えるけれど、超一流メゾンによるオートクチュールだ。

本場パリ・クチュールの最高峰メゾンと結城のデザイナーズチームが手を組み、次期総会長の妻として相応しいしとやかさ、上品さ、華やかさ、愛らしさを計算し尽くして完成した一着なのである。

結城は日本中のありとあらゆる事業を網羅している。当然各事業で大々的に広告を展開しているけれど、今日の私と颯の姿はどんな宣伝よりもコンツェルン全体のイメージアップに繋がるはずだ。

だから今日の私は徹底的におしとやかで上品で知的な令嬢をつらなかなくてはいけない。ちょっとでも豪華さが過ぎれば世間知らずの阿呆令嬢に見られ、野暮ったければセンスがないだの結城も落ちぶれただのと嘲笑される。そんな結城家と浅葱家が固唾を飲んで見守るようなハイリスクハイリターンを、私は背負っているのだ。
 
< 119 / 155 >

この作品をシェア

pagetop