夏色かき氷【短編集】
店内の彼女

市内でもわりと大きな書店。

メディアミックスされた有名ライトノベルはもちろん、連載マンガの最新刊や、ネットでも話題の電子辞書、世界的に話題になったCDやDVDも売っている。客も多い。

ここでバイトを始めて早4年。高校の時から大学生になった現在まで、俺は様々なお客さんと接してきた。

そのせいか、仕事中は、古株アルバイターとして新人やパートの人達にかなり頼りにされている。


最近、バイト中、あることが気になって仕方ない。

常連の女の子が買う、本のことだ。

彼女は、俺がここで働くより前からこの店に通っている昔からの常連らしい。店長が言っていた。

歳は、俺より二、三個下の高校生。彼女は本が好きらしい。


店が忙しい日、俺はたいがいレジに立つんだけど、ここ数ヵ月の間に、彼女の買う本のジャンルがガラリと変わった。そのことに、俺は衝撃を受けていた。

誰がどんな本を買おうが、店員の俺には口出しする権利なんてない。分かってはいるんだけど、あまりに変わり過ぎ。平然とレジ対応するフリをして、言葉にならない感情が生まれるのを感じた。

それから俺は彼女のことが気になるあまり、彼女がレジに持ってくる本をジッと見るクセがついてしまっている。

高校生だし、精神的成長の過程で趣味が変わったり、周りに勧められて自分の好みとは違うジャンルに手を出した、って可能性は高い。それにしても……。

選ぶ本は、今、その人が必要としているものなんだと思うから。

彼女に、彼女の内面に、何があったんだ?

なんだか納得できなくて、俺はつい、彼女を見てしまう。

長年店のバイトをしてるという立場を最大限に利用して、彼女が買うものをチェックしてしまう。
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