抹茶まろやか恋の味


「そういえば、作法とか何も知らないよ」


 ぼそりと呟きながらハガキほどのサイズの一枚のチラシと、目の前の特殊校舎、別名セミナーハウスの入り口をにらめつけながら脳内会議をしていた。


 このセミナーハウスは行事・有事の際に開放される施設で、和室、自習用パソコンルーム、小さな舞台まで備わっている。


 その和室で茶道部のお茶会がある、というのだ。


 値段は百円。
 百円でお菓子とお茶……お抹茶? が飲めるということが握られた紙には書かれている。


 少なくともこれで空腹はしのげる――が、問題は別にある。


 僕は生まれてこの方、茶道に触れたことなどないのだ。


 だから礼儀作法とか、そういうものは何一つ知らない!

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