雨恋~芸能人の君に恋して~



ハルさんとマッシーさんとのやり取りを、頬を緩めて眺めていると、



「ドキドキするんだ?」



優紀君が聞いた。



「ハルさんに褒められて、琉宇ちゃんは赤くなるほどドキドキするんだ?」



不機嫌な声。



優紀君の顔を見ると、声と同じ不機嫌な顔で、



「琉宇ちゃんは、ハルさんみたいな大人の男の人がいいんだ?」



そう言った。



明らかに拗ねる優紀君に、あれ?て思う。



もしかして優紀君、嫉妬してる?



私がハルさんに見惚れてて、嫉妬してくれてるのかな?



「琉宇ちゃんは、俺だけを見てて」



拗ねた口調で、私の手をギュッと握る優紀君。



「ほかの男を見るなんて、我慢できない」



そんなこと、あるわけないのに。



これじゃあ、まるで優紀君が私を好きみたいじゃない。



「やっと手が届くとこまで琉宇ちゃんに辿り着いたんだ。俺はもう、この手を放すつもりはないから」



まるで愛の告白みたい。



優紀君の手に、言葉に、透き通るような茶色い眼差しに。



ドキドキが止まらない。



「好きだよ、琉宇ちゃん」



優紀君の言葉に、私と優紀君が立つ場所だけ、時間が止まったような気がした。



「6年前。初めて会った時から、ずっと好きだ」



優紀君は、握った手に力を込めた。



「もう逃がさないよ、琉宇」




< 56 / 94 >

この作品をシェア

pagetop