我那覇くんの恋と青春物語~水谷百合編~
「おい、一樹。今日は弁当か?」


後ろから肩を軽く叩いて、石動光太郎(いするぎこうたろう)が問いかけてきた。

その言葉で時計を確認し、鞄の中から慌てて弁当を取り出す。


「わり、今日は第二体育館に行くわ」


「第二体育館?なんで、わざわざあんな所へ」


「ふっふーん。それは察してやれよ、コウ」


どこからともなく八坂雅(やつさかみやび)がやってきて、不敵な笑みを浮かべる。

こいつには全てお見通しのようだ・・・


「あっ、もしかして水谷さんの自主練?」


どこか拍子抜けしたように、雅と二人で前に転びそうになる。



海まで知っているとなると、雅にお見通しということではなく、単にコウが鈍いだけなのか。


「ちょうど良かった・・・これ、水谷さんに渡しておいて。この前の取材のときの写真」


「へいへい」


今まで内緒にしていたことが馬鹿馬鹿しく思えたのと同時に、なんともいえない恥ずかしい気持ちが全身を覆う。

それを隠すためにわざと愛想のない返事をしたのだが、それすらも海と雅には見透かされているように思えてきた。


「いってらっしゃ~い」


どうやら予想通り、完全に見透かされているようだ。

笑顔の海と雅、その後ろでまだ状況がいまいち掴めていないコウに見送られ第二体育館へと向かった。
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