我那覇くんの恋と青春物語~水谷百合編~
屋上の入口に着くと、そこには水谷さんではなく西園寺さんが立っていた。


「あの・・・」


思わぬ人物に戸惑いを隠せず、コウの聞き間違いではないかと思う。


「開いているから、行けばいいのだ」


小さく溜息に似たような声をもらし、こちらへと近づいてくる。

今まで何度も理不尽なことを言われてきたので、少し後ずさりしてしまう。


「・・・百合を傷つけたら、西園寺家を敵に回すのと同じなのだ」


西園寺さんはそれ以上は何も言わず、そのまま階段を降りていった。



そういえば、第二体育館でも二人でいたが、二人は一体どういう仲なのだろう・・・


「あっ・・・来てくれたんだね」


西園寺さんの言う通り扉は開いており、屋上には水谷さんが立っていた。


「屋上なんて初めてだから、凄い新鮮な感じがするや」


水谷さんの横に立つと、そこからは学校のグラウンド、その先に広がる市街地が見渡せた。

天気が良いことも手伝って、それらがはっきりと見える。


「私は・・・何度か来ているから」


「えっ、でも屋上は・・・」


「西園寺さんに開けてもらってるから・・・今日も」


よく見ると、何か物置のようなものが建ててあり、隙間からは色々なものが見える。

どうやら、西園寺さんがしょっちゅう来ているらしい。
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