才川夫妻の恋愛事情
「あぁ、うん」
照れ臭そうに笑うので、今幸せなんだなぁと思ってほっこりした。
葉山さんは右手で左手の薬指の指輪をいじりながら会話を続ける。
「でも……そうだなぁ。あの二人が今こんなに仲が良いのも、意外と言えば意外なのよね」
「意外、ですか?」
「あの二人、入社してすぐの研修ではまったく喋らなかったから。もしかして仲悪いのかなって思うくらい」
「へぇ……?」
それは新しい情報だ。
「あ、噂をすれば才川くん、帰ってきたね」
「あ、本当ですね」
遅めの昼食に出ていたらしい才川さんはジャケットなしのシャツ姿でフロアに帰ってきた。その半歩後ろを一緒に出ていたらしい花村さんがついて歩く。……やっぱり夫婦に見えるんですけど。
思ったままを葉山さんに伝えようとしたとき、どこからか別の男の先輩がやってきて才川さんに声をかけた。
「才川さんどうっすか今晩の試合! 行けます?」
「あぁ、いや、うん……」
この会社に入社してわかったこと。我が社の男性陣はみんな合コンのことを〝試合〟と呼ぶ。
言葉を濁した才川さんはちらりと背後の花村さんを見た。
花村さんはにこりと笑う。凛とした笑顔。花村さんが幼く見えるのは事務の制服の大きなリボンがあるからかなぁ、なんてぼんやりと思っていたら。
花村さんは、才川さんのネクタイを掴んでぐいっと引っ張った。