告死天使
で、俺は…

「…ごめん、不合格!」

直立不動の姿勢から、俺は彼女に向かって頭を下げた。

――志望を変えたことを、彼女には言っていなかった。
落ちた時に、よけい残念に思うだろうから…。

合格したら言うつもりだった、
〈きみのために、医者になる。〉
そして、少しでも喜んでもらえたら。そう思っていた。

奴にも、そのことは伏せるように頼みこんでいた。
だから彼女は、俺が夢を追いかけて2度目の挫折をしたと思っているはずだ。
2度目の挫折には違いない、だが、俺にとっては大きな痛手だった。

彼女の病状は進行していた。
一日でも早く、食い止めなければならないのに。
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