告死天使
それから
その4月、俺は予備校を退学した。

彼女のために、もう何もできない。
医学部にも意味がなかった。

「彼女」。
「女性の三人称」であって、「恋人」という意味ではない。

それでもやはり、俺は、彼女のことが好きだった。
そう打ち明けることができなかったにしても。

彼女のために、何かしたいと願った。
できれば、それで喜んで欲しいと。

ただ眺めるだけでよかった。
自分とは違う道を歩く人間。
手の届かない彼女を、見守るだけでよかった。
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