王子様の献身と憂鬱

 つ……と指が肌の上を辿る。


 皮膚の薄い敏感な部分は撫でるように優しく。視線を感じたらほんの少し煽情的に。触れたりない所などないようにじっくりと。
 絡み合っている内に表面が潤んで行くのが分かる。禁断の果実の甘い香りと一瞬の恍惚。重なり合った人肌の温もりが身体だけじゃなく心まで解きほぐす。


 でもまだ足りない。求めているのはそれだけじゃない。このままじゃ満たされない。
 もっと刺激的に。
 もっと奥まで。
 もっともっと、深い所まで届かせて。




*   *   *




 見た目は良い方だ、と言う自覚がある。必ずと言っていいほど褒められるからだ。それが自信に繋がるのは当然だろう。
 そしてこのルックスが彼女にとって重要なファクターである事を僕は知っている。彼女はとびきり面食いで頑張り屋で健気で可愛くて、そして少しだけ計算高い。


 そんな彼女を愛して、癒やしたくて、笑顔にしたくて、誰よりも綺麗でいて欲しくて。今日も僕は彼女のそばにいる。
 僕の全てを搾り取って、君が綺麗になって行くのならばそれでいい。僕は喜んで君を飾るアクセサリーの一つになろう。

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