寂しがり屋のプリンス
寂しがり屋のプリンス

彼は、通称『プリンス』。
気難しくて、扱いづらい。

皆が彼のことを必要としているけど、すぐにへそを曲げてしまう。
従業員7名の小さな事務所で、王子様のように君臨している。


「茉莉、プリンスが呼んでる」

「またぁ?」

「頼むよ、なんとかして」


同僚の懇願に、イヤイヤ席を立つ。

そりゃさ。私だってプリンスのことは好きだよ?
でもこう度々呼ばれるんじゃ大変っていうか。

プリンスには専用スペースが用意されている。
寄りかかれる壁があって、給湯室にも近いいい場所だ。

いつも特別扱いにしてるから、あんなに気位が高くなっちゃったんじゃないですかね。


プリンスの定位置に向かうと、彼は悠然と私を招き入れる。


「よう、やっときたな茉莉」


余裕の笑みで迎えられると、なんだかイライラしちゃう。


「また何をへそ曲げてるのよ」

「お前が来ないからだろ?」

「アンタにばっかり構っているほどヒマじゃないのよ」


冷たく言うと、プリンスはムッとしてソッポを向く。

そのまま私たちは平行線。でもにらみ合いを続けてもプリンスには全く効果がない。

通りすがりの同僚が「あ、プリンス君これお願い」と声をかけても、「今はダメ」の一点張り。
同僚は、「やっぱ茉莉じゃないとダメか」と私の肩を叩いて行ってしまう。

皆に迷惑かけるの辞めようよ。
私は呆れて、彼の肩を叩く。

< 1 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop