拾われサンタ、恋をする



「亜紀さんはしっかりしているようで危なっかしい。だから放っておけない……っていうか」


言いかけた手前曖昧に終わるわけにもいかず、散々逡巡してから――――ようやくポツンと素直に思うことを言った。


亜紀さんが恥ずかしそうに俯いたので、すぐに方向を変えたけれど。


「僕が勝手にお節介やきたいだけです。必要な時には甘えてください」


こんな時にも真顔の自分って一体どんなだ。


愛想のいい笑顔ひとつ見せられたら、きっと言葉の意味合いも変わってくるのに。


自己嫌悪に襲われている所に、柔らかい声でお礼を言われ、急いで顔をあげる。


「お節介だなんて思いません。わかろうとしてもらえるのは、すごく嬉しいですよ」


「そっか、よかったです」


「はい。外でボロを出さないようにするのって、得意じゃないんです私。その点、南くんには弱った所見られてばかりだから、たぶんマヒしてますね」


「……え?それって――――」


つまり僕には素を見せている、と聞こえたんだけど………そういうことでいいのかな。


だとしたら、ちょっとやばい、嬉しいと思っている自分の心が隠しきれない。


僕は手袋をした手で顔を半分覆って、不自然に身体を反転させた。


きっと不思議そうに首を傾げている亜紀さんの表情が、見なくても分かる。


「南くん?」


「なんでもないです。ごめんなさい、ちょっと待って」


落ち着け!この人ほんとに何も考えてないから!


しかも待てと言っても待てないのが亜紀さんだ。


「もしかして体調が」


「悪くないです。ただ……」


僕は会話の途中で、なんとも気の抜けたため息をした。


「……一人っ子お嬢様の恐ろしさを、身を持って味わった気分です」


警戒も打算もない、よく言えば素直だが、悪く言えば疑うことを知らない人だ。


意味は分からなかったようだが、なんとなく自分に否があることを察したのか、亜紀さんが申し訳なさそうに肩を竦めた。



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