そのときまで。
彼女は



僕は彼女が好きだ。

僕を見つめる大きな瞳も。全部。

前は会社にいる時間の、ほぼ全ての間を彼女は僕と過ごしていた筈なのに、今ではその時間は減っていることに僕は気付かない振りをしていた。


初めて会ったときの彼女は、まだ幼さを滲ませていて。慣れない様子で仕事をする彼女は、入力ミスをして、その度僕は彼女に間違いを教えたり。時には上司に怒られて、涙を我慢しながら作業する彼女を僕は知っている。

だから、彼女が成長するって僕はわかっていたよ。誰よりも彼女の近くで、頑張る君の姿を見ていたんだから。


いつからか、彼女に後輩ができた。

彼女は後輩の所へ行っては、僕以外のやつを見つめて作業する。そんなことが多くなっていた。


けれど、僕はそれでもいいんだ。

それでも彼女は1日に、何度かは僕を見てくれるから。


体調が優れなくなった僕を、彼女は不安げな瞳で見ていた。

『ごめんね、もうすぐ治るから』

そう彼女に伝えても、彼女の表情は晴れなくて。


僕はウィルスにやられてしまったらしい。瞼が重くて、なかなか開かない。けれど、彼女が僕を呼んでいると思うと、どうにかしてでも開けてみせるよ。

だから、僕を起こして。


彼女が僕以外のやつを見つめても、いいよ。彼女が僕といる時間を減らしても、いいよ。彼女が数回でも僕を起こしてくれるなら。彼女が数回でも僕を見てくれるなら。


僕の瞳に彼女が写るなら。

見えなくなるまで

__僕の瞳に、彼女の姿を焼き付けよう。





*end*


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( いつか僕が壊れてしまう、その時まで )


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