幼馴染みの期限

「ひろみ……?」


何してるの?まだ学校が終わる時間じゃないのに。


「どうしたの……って、何それ?」


片手に何か長い棒を持っている。ポール?竿?とにかく、これで窓を叩いていたみたいだ。


「これか?高枝切りばさみだよ。庭の手入れするヤツ。じーさん使ってただろ?……ってか、そんなのどうでもいいんだよ。……何だよ、お前元気そうだな。さっきチャイム鳴らしたんだぞ」


「さっきって……?」


「さっきはさっきだろ。聞こえなかったのか?里子かーさんも寝てるみたいだって言うから、起き上がる元気も無いのかと思って焦ったじゃねぇかよ。起きてるんだったら、さっさと開けろよバカが。寒いだろ」



バカって何よ。昔だったら寝てたって関係無く上がり込んで、部屋まで入って来てたくせに。


そう言いかけてから、ここ一年半くらい広海が私の部屋どころか、家にすら来ていなかった事に気がついた。


もちろん、私も昔のように気軽に広海の家に行くことは無くなっていた。



部屋に入れずに、ベランダの下からあんな物を使って窓を叩いて話かけてきた広海。


いつの間にか私達はこんなに離れてしまっていたんだ。


「樹里」


「……なに?」



誰からも着信の無い電話、広海との距離。


全て現実のはずなのに、心がそれを受け入れられない。



「明日、さ。一緒に学校に行こう」


誰も信じることができないくらい、私の心は沈んで塞ぎこんでしまっていた。


だけどそう言ってくれた広海の顔は、幼い頃からいつも側にいた優しい『幼なじみ』の顔をしていたから……



広海の事だけは信じられる。



……そう思ったんだ。

< 125 / 345 >

この作品をシェア

pagetop