陰なる閃刃
佐々本にこんな書状を送りつけることにより、彼を精神的に追いこみ、不安の海に沈めようと企んでいるのだ。

それだけなら、まだいいのだが…。

利巌は、佐々本に訊いてみる。


「この書状が真の意味をもっているとするならば、佐々本殿が命をかけて守るべきものは何でござろう」

「それは……!?」


ハッと目を見開いた佐々本は、顔から血の気が引いてゆく。


「や、柳生殿、まさか!」


おそらく、その「まさか」であろう。


「佐々本殿、あいわかった。この利巌、あなたの力になりましょう」


利巌はそう言うと、虎之助を呼ぶのだった。


そして三日後――

城勤めから帰り、ゆうげ(夕食のこと)も済ませた佐々本は、父の刀を屋敷の離れにある蔵に仕舞う。

その様子を、佐々本の知らない何者かが、屋敷の屋根の上からじっと見ていた。

(ふふふ、馬鹿め。『家宝』を刀だと思っているのか)


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