身代わり王妃の恋愛録

「一応確認しておく」

陛下が重々しく口を開いたのは朝食を終えてから。はっきり言って嫌な予感しかしないのだけど私は小さく頷く。後回しにするほどこう言うのは嫌になってくるからね。

「婚約を発表するのは明日だ。わかっているな?」

…ん?

たぶん今、私の目は点になっていることだろう。意味がわからない。

「あ、した…?明日って明日?翌日?今日の次の日?」

「…それ以外になにがある?」

陛下が怪訝そうな顔で言う。
いやいやいや、意味がわからないよ?なんで前日に知らされるの?

こう言うのって普通、もっと前から知らせて、それ相応の準備期間が設けられるものじゃなの?

「……準備期間とかは…?」

「明日の夕刻からだ。お前なら朝軽くやれば問題ないだろう」

「……ドレスは?」

「完成したのが既に届いている」

「……こう言うのって他国からお客様が来るものなんじゃ…?」

「それはまた別に正式なものをやる」

「………明日だ、って私は一度もきいてないよ?」

その瞬間、陛下は訝しげな表情をして見せた。

「……何も?…きいてないのか?」

「うん。それに」

明日は聖クレイティアの日でしょ?

その言葉は飲み込んで私は、眉間にしわを寄せて首をかしげる陛下をただただ見つめた。

明日は聖クレイティアの日…つまり陛下の誕生日だ。国中で盛大なお祭りがあるはずだし、お城でも盛大なパーティーがあるはずだ。

私は陛下を誘ってお祭りに参加したかったのに。朝準備、夜パーティーなんてあんまりだ。

けれど多忙な陛下にワガママを言うわけにはいかない。せめてお祭り気分が味わえるように陛下にサプライズをやりたい。いや、お祭り気分は置いといて、陛下にいつもお世話になっているお礼をしたい。

誕生日は生まれてきたことを感謝できる大切な日だ。それをお世辞と作り笑顔あふれる社交界で終わらせたくない。

「…それはこちらの不手際だな。…だがもうずらせない。何か大切な用事があるのか?」

あなたの誕生日ですが?

そう言いたいのを堪え、私は静かに首を横に振る。特に用事はないし、あったとしてもそれが優先だ。今の私はミレイであることを最優先させないといけないのだから。

「…言いたいことがあるなら言ってもらえれば善処はするが」

「ううん、違う違う。なんでもないの。今日の予定について考えてただけ」

「ソラがいるから大丈夫だとは思うがあまり目立つような行動は「もう!常時気をつけてますっ!」」

わざとらしく両手を挙げてそう言いつつ、私は考える。陛下に渡すプレゼントとか、サプライズ方法とか作るケーキとか、どうしよう…?
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