① オオカミさんとクマさんに。狙われた私の…
出張当日ーー

 新幹線の指定席。

「お茶~、コーヒー、お弁当など…」
「わあ、大神さん、お弁当売ってますよ、どうします?」

 私は、はっきり言って田舎者である。新幹線など久しく乗らないものだから、すっかり舞い上がっていた。

「ばか、遠足じゃないんだ」
「……」

 …そう、旅行の相手は大神リーダー。

 にべもない返事の後、彼は再びモバイルパソコンに向かう。

 …いいもん。自分の分だけ買ってやるから。

「お姉さんお弁当1つ…」 
「2つ」

…何よ、自分も欲しいんじゃない。

「何だよ」
「別に」

 お弁当を2つ受け取って、1つを彼に差し出す。

 彼はさっと千円2枚を出して会計し、添乗員へのスマイルも忘れない。

…ホント、外面だけは完璧なんだよねぇ。

「あの、お会計…」
「ああ、要らない。それよりも…」

 渡そうとした千円札を断ると、彼はパタンとパソコンを閉じた。

「これからの予定を説明する」

 ご飯のお礼を言う暇も与えず、小さいお辞儀も見るか見ないかのうちに、彼は説明を始めた。
< 5 / 21 >

この作品をシェア

pagetop