不器用な彼が隠した2文字




誰からの、電話だったんだろう。




手元の500円玉を見て、俯く。

私がお礼するって言ったのに、だから私が払わなきゃ意味ないのに。



「…」



まあ、急用なら仕方ないよね。

アイスだって食べ終わったし、どっちにしろもう帰ることになってただろうし。


そう自分に言い聞かせて、お店を出た。





メールを見た瞬間の、少し苦しそうな表情が忘れられない。


きっと朝比奈先輩には、私が知らないことがたくさんあるんだろうな。



きっと、私が知ってる朝比奈先輩は、彼のほんの一部で。


そう思うとなんだか、夕方の風がやけに冷たくて寂しくなった。







< 108 / 341 >

この作品をシェア

pagetop