不器用な彼が隠した2文字
「彼女がいたら、俺のこと諦めんの?」
振り向かずに、それだけ言ってまた階段を降りる朝比奈先輩。
私はその言葉になにも返せずに、朝比奈先輩がいなくなった階段を見つめていた。
諦めるの?
って、そんなの…
彼女がいるなら、諦めるしかないんじゃないの?
諦めなくてもいいの?
ねえ、それって
どういう意味なんですか?
私がバカだからなのかもしれないけど、
ハッキリ教えてくれない彼も彼だ。
『彼女がいたら、俺のこと諦めんの?』
その言葉の意味が分からずに、階段に座り込んでいた。
外では、強い風が窓を揺らした。