閉じたまぶたの裏側で
会社の近くの居酒屋に入った私と應汰は、テーブル席に向かい合って座った。

「遅くなってごめんな。」

「ホントだよ。その分、飲むからね。」

「おぅ、いいぞ。」

生ビールをジョッキで注文して乾杯をした。

應汰はビールを飲みながらネクタイを緩める。

「芙佳と飲みに来るの久しぶりだな。」

「そうだね。前に来た時は、舞と付き合い始めて2ヶ月だって言ってた。」

「もうそんなになるか?」

運ばれてきた料理を少しずつ取り皿に乗せて應汰に手渡す。

「ハイ。」

「お、サンキュー。あれだな。やっぱ芙佳といると落ち着くわ。痒いところに手が届くって言うか、なんも言わなくてもいいからラク。」

「何それ?」

世話やいてもらって落ち着くって、誉めてるつもりなのか?

「なんでも男にやってもらって当たり前って思ってる女の子、けっこう多いな。」

「そんなもんなんじゃない?若い子は特にね。世話焼きの私はさしずめ、オカンってとこ?」

「オカンとまでは言ってないだろ。よく気が付くんだよ、芙佳は。あれして欲しい、これして欲しいって言わなくても、それを察して先回りしてくれる。」

「いい奥さんになれそう?」

「おー、絶対なるだろうな。」


奥さんになんてなる予定ないけど。



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