そんな彼に今日も溺れて
今日も彼に溺れます


 今日も君に会えた――。

 ピッタリとした細身のスーツを着こなした彼。
 センスのいいネクタイに、小さなキャッツアイのネクタイピン。
 左腕に光る細いベルトの腕時計が彼の華奢な手先を、指先を美しく見せる。
 そんな彼は出社した私を即座に見つければ嬉しそうに微笑む。

「仕事だけどね」

 私がそうおどけて笑って見せれば
「それでも会えればうれしいんだよ」
 とさらりと言ってのけた。

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