おまえのこと、待ってる。
不貞腐れてむすっとする私に、彼は諭すように言った。

「周りの連中は適当にうまいことよろしくやってるだろ?」

「それは……」

答えを口ごもる私に、彼は「ったく、これだから要領悪ぃっつうの」と呆れてげんなり溜息をついた。

「つまりあれだ、おまえひとりが気ぃ遣う必要なんてないってこと。我慢しなくていいってこと」

「うーん」

けど、そうは言っても……。

「あーもう、じれったい奴だな」

「ええっ」

うじうじと煮え切らない私に、彼は業を煮やしてしまったようで……。

「その気になればいつでもどうにだってできるって高をくくってんのか?」

「高をくくるなんて、そんなっ……」

彼は私の肩をいっそう強く抱き寄せると、心の奥まで射抜くようなまっすぐな瞳でみつめてきた。

「じゃあなんだよ? 言ってみろよ」

どうしよう、もう逃げられない。もう、嘘はつけない……。

「私、本当は――」

「本当は?」

「あなたのことが……」

「俺のことが?」

「………欲しい。あたなが欲しいの」

言ってしまった。いつも遠慮して我慢していた私の本音。

「ったく、さんざん焦らしやがって。おまえのための時間、たっぷり用意して待っていたんだからな」

「うん……」

ああ、不敵に笑う意地悪な表情もいいけれど、やっぱり優しい笑顔がいい。

今夜は彼とこのまま一緒に――。



「ん……んあ? うっわ、私ってば寝ちゃってた……!?」

あれれ、えーと確か――人事課にようやくまとまった勤務表を提出に行って、戻ってきて、そうしたら……。

あー、なんか思い出したかも。
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