wish

誠の突然の告白に昇は驚いた。

当然、告白された友香本人も、驚きを隠せない。

この静寂をやぶったのは誠だ。


「…宮内さん」

「は、ぃ…」

友香は誠のほうをなるべく見ないよう、伏し目がちに答える。

「…返事」

その誠の言葉に、友香は肩を強ばらせた。

友香の反応を見た誠は

「文化祭の時に、聞かせて」

と言い、屋上をあとにした。

友香もしばらくその場に立ったまま固まっていたが、
ゆっくりと屋上から出ていった。

キィッと鳴った扉の音に、
昇は潜めていた身を起き上がらせ、深く息を吐き出す。


誠が告白した。


そのことが今、昇の頭のなかをぐるぐると巡る。

最近、友香と誠はよく話していたし、友香も了承するのではないだろうか。

それにあの2人はよく似ている。

誠とも、もとの関係に戻れるかもしれない。

そう思うのだが、昇の胸はちくりと痛んだ。

ほんの少しの痛みが、徐々に昇の思考を混乱させるが、
それを払い除けるように目を閉じてまた寝転んだ。

さっきまで聞こえてこなかった校庭からの雑音が、再び耳に届く。

静寂に包まれたような気がしたのは、おそらく自分の心臓のせい。

そんな自分の気持ちを隠すようにと、何か別のことを考えようとする。

しかし、考えれば考えるほどに、自分の気持ちが浮き彫りになった。



―そういえば、友香と出会ったのもここだったな



友香がこの場所に寝そべって、いきなり昇に声をかけてきた。

もしあの日がなかったら、友香と話すことはなかっただろう。

そう思うと、昇は少し複雑な気持ちになった。

「もしも」

なんてことは考えだしたらきりはないが、
もし、本当にあの日がなかったら―


そう思わずにはいられなかった。



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