夢が醒めなくて
「ああ。なに?花言葉?」
「うん。……あれ?思い出せへん。何て花やったけ。キッソス?キサス?」

ナルシス?アイビー?
違うな。
何やっけ。
昼だけ咲く花って言うてた。
正午草?
あ。
午時、草?

「これか?午時葵。花言葉は、」
いつの間にか、啓也くんが代わりに検索して探し当ててくれていた。

「そう!それ!午時葵。花言葉は?……は?」
催促したけど、啓也くんは固まっていた。

美幸ちゃんがやってきたのだ。
「何で逃げんのよ。」
目が据わってるよ、美幸ちゃん。

「別に、逃げてへん。」
啓也くんはそう言ったけど、視線を逸らした。

「逃げてるやん!信じられんわ!やっと手に入れた思ったら、やり逃げ!何様!?」
美幸ちゃんがそう叫んだ。

「しーっ!声、落として。美幸ちゃん、本気で啓也くんのこと?」
じゃあ、どうして、他の男の子とつきあってたん?

「そうや。いつまでも煮えきらへんねんもん。待ってられんやん。でも、このままは嫌やってん!」
美幸ちゃんはほとんど泣いていた。

啓也くんはうつむいて立ち尽くしていたけど、美幸ちゃんじゃなくて、私に向かって言った。
「私は明日死ぬだろう。」

へ?

「何なのよ、急に。」
美幸ちゃんの声が弱々しくなった。

「自殺?まさか、2人で心中?」
びっくりしてそう聞くと、啓也くんの目からホロッと涙がこぼれ落ちた。

「花言葉。……こいつが、死ぬようなタマかよ。……これまでも、これからも、俺を誘ったみたいに、数え切れんぐらいの男を肥やしにのし上がってくんやろ?」
啓也くんは美幸ちゃんにそう聞いた。

美幸ちゃんも泣きだした。
「そうや!啓也くんも、口惜しかったら底辺から這い上がり。最低、年収一千万。」

マジで?
2人は両想いやったのに、終わりなん?
それでいいの?

「私も、明日死ぬようなもんやわ。」
美幸ちゃんがそう言うと、啓也くんが駆け寄って美幸ちゃんを抱きしめた。

キャーッ!
生ラブシーン!
てか、私、邪魔よね。
退散退散。


ねえ。
義人さん。
何で、花言葉、教えなかったの?
義人さんから見て、私も死んでしまうんじゃないかってぐらい危ういのかな。

……啓也くんにも、美幸ちゃんにも、義人氏にも、大事にしてもらってるわ、私。
それこそ、明日死んでしまっても、いいぐらい。

ああ、そうか。
美幸ちゃんとの別れは、たぶん、私の少女時代の終焉。

少女の私は、明日死ぬのかもしれない。
< 65 / 343 >

この作品をシェア

pagetop