朱色の悪魔

顔を上げろ。まだ、時間はある。まだ、まだ、まだ…。

諦めるには早すぎるんだっ!!

「ッ…」

ぽっかりと空いた穴に身を投げる。階段を転がり落ちる。やっと地面に着いたときにはもうくらくらで、身体中が熱い。

それでも、少しでも前へ、前へ進む。

等間隔に並んだ非常灯が永遠と長いトンネルを照らす。

無様でも、醜くても、行くしかない。

まだ、生きていたい。まだ、やりたいことも、やれなかったこともたくさんあるの。

魁と、一緒に…。傍に、いたい…。

「はぁっ、はぁ……」

トンネルの中が暗くなっていく。見えない。非常灯、切れちゃったのかな…。

暗い。暗い。暗い。電源落ちたのかなぁ。早く、出なきゃ…。少しでも遠くに行かなきゃ…。

ここを出たら、魁に会えたら、怒られるだろうな。

怒られて、それで魁は離してくれないの。ぎゅって、抱き締めてくれるの。それで、また愛してくれるかな…。

不意に体が軽くなったような気がする。立てる、走れる!

長いトンネルを駆け抜ける。出口はもう、すぐ目の前だ。

光が大きくなる。その光に飛び込むようにして長いトンネルを抜けた。
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