朱色の悪魔

「…父さん、いいね?」

「…」

無言は肯定を示す。

留榎は少女の傍らに膝をつくと、そのか細い手を取り、脈をはかり、閉じた瞳を開いて覗く。

最後に息がないことを確認すると、労るように少女の手を置き、微笑んだ。

「朱音、お疲れ様。ゆっくりおやすみ」

「っ…くそ」

「…」

静寂が周囲を包む。

呆然と少女を見下ろしていた魁の瞳から、1粒、零れ落ちる。それを境にまた1つ、1つと止めどなくこぼれ落ちていく涙。

「…あ、…………っあぁぁぁあああ!!!」

煙が上がる建物に向かっていくサイレンや、時々聞こえる爆発音を打ち破るように響いた声。

雲1つない空は、どこまでも青々と続いていた。
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