円満破局




なにを、わたしは浮かれているんだろう。



周りにこんなに人がいるのに。

はるくんをひとりじめした状態で、さらに約束を重ねて。



みんながどんな想いで、わたしを、彼を、見つめているのか。

冷静になれば、わからないはずがないのに。



自然と顔がうつむきがちになる。



「笑花?」



笑う、花。

わたしには不釣り合いの、名前。



彼の優しい声で呼ばれる。

それがこんなにも嬉しくて、……苦しい。



きっとわたしのこの感情は、はるくんにだってわからない。

誰より人望がある人気者のはるくんだから、わからないんだ。



周りに注目されることに慣れた彼の隣は、常に舞台の上に立つよう。



通りすぎるだけの町人Aにもなれない、大道具なんて目立つものだって作れない。

まるでわたしは小道具係かなにかだね。



華やかさがなく存在をあまり認知されないようなわたしに、誰かが関心を向けているなんて、そんなこわいことってない。



普通の人たちにはわからない。

だけどわたしにはわかる、人と人の違い。

それがこんなにも鮮明に伝わってくるのに平気でなんていられないよ。



だってわたし、自信なんてない。

胸を張れるようなことなんてない。

慎ましく生きていくのがお似合いなんだから。



ごめんね、はるくん。

大好きなのに、はるくんのことがどこか妬ましいよ。

それでいて愛おしくてたまらないよ。






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