星々は呼吸する
 


それは本当に、一瞬の出来事。
瞬く間に消えてしまったその残像を追うように、私は大きく目を見張った。

「黒崎、今……流れた」
「うん、見た」
「はや……」


星が流れる間に三回願い事を唱えれば叶うというけれど、そんなの無理だ。いくらなんでも速すぎる。

ぽかんとしたまま空を仰ぐ私のすぐ隣で、黒崎はまた小さく笑った。


「一瞬で願いを三回唱えられるくらい強く祈れば、望みは叶う、ってことじゃない?」


まるで私の頭の中を見透かしたような彼の言葉に、こくりと頷いて。彼の手の平に包まれた自分の手に、徐々に力を込めれば。


さっきまでの息苦しさが嘘のように。

ああ、私、呼吸してる。彼の鼓動が、繋いだ手から確かに伝わってくる。

今まで気づかなかった。
きっと私も、
彼の目に映る小さなかけらのひとつ。



――これからも、黒崎の隣で、黒崎のことを見ていられますように。

そっと祈りながら彼の方に目をやると、星に語り掛けるその横顔が、ずっとずっと愛しく思えた。







『星々は呼吸する』

-END-

 
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