奪うなら心を全部受け止めて


「じゃあ、果林ちゃんと約束出来たら、買い物行こう。晩御飯、一緒に作ろう。佳織は何が得意?」

「うっ…得意といえるかどうか、ハンバーグなら、…なんとか大丈夫かも」

「じゃあ、ハンバーグの材料買いに行こう。あと、お泊りセットもな」

「あ、…はい…」

お泊りセット、か…。ずっと置いておいていいのかな。

「そうと決まったら、早速果林ちゃんに連絡だな」

「はい」




何もしない宣言をされても、…やっぱりお泊りするって…ドキドキするし、恥ずかしいし。ずっと一緒に居るんだ。
ご飯食べたら、お風呂にだって入るよね。
寝る時は…、やっぱり一緒なのかな…。一緒だよね。
キャー…、眠れないよ、きっと。ドキドキして。

「佳織?佳、織?」

「あ、は、はい」

「焦げるぞ。ほら、もういい感じじゃないか?」

「あ、は、はい」

「心配?」

「え?」

「色々、心配?急にお泊り決めたから」

「あ、はい。あ、いいえ、はい」

「初めてだもんなぁ、一緒に朝まで過ごすの」

ぼっ。そんな事、言葉にしないで。朝までって。
あ、…。
ハンバーグを返す手に、手を重ねられた。一緒にフライ反しを握った。

「スキンシップだよ?セクハラじゃないからね」

「セ、セクハラだなんて、そんなのあり得ません」

「そう?」

「はい、…嫌じゃありませんから」

言ってて恥ずかしくなった。消え入りそうな声になる。
どうも優朔は、部屋だと私に意地悪をする。
…困ると知ってて、わざとだ。


「ぅわっ。え?」

今度は後ろから抱きしめられた。腰に腕を回された。背中に優朔の心臓の音が伝わる…。
う、ダメダメ。くっつき過ぎ。

「佳織…、可愛い」

「え?」

頬に唇が触れた。

「あ」

バクバクバクバク…。心臓に悪い。あ、もーー。ダメだ。…焦げしまうぅ…。
< 119 / 216 >

この作品をシェア

pagetop