奪うなら心を全部受け止めて

・募る、やる瀬無さ


・千景27歳

「一体、いつまで…こんな関係続けるつもりなんだ。自分がそれでいいと思っても…傷付けているんだぞ?自分自身の事。
会えば会うほど、…関係を持てば持つほどだ」

「解ってる。そんなの解ってるから…」

「じゃあ、何故止めないんだ」

「止められないから…」

「どうしてだ…。一生このまま続けるつもりか?…知ってるのか」

「え?」

「知ってるのかって聞いてるんだ。…奥さんは知ってるのか?…どうなんだ」

「…解らない」

実際、優朔が話しているのかどうか確かめた事はない。優朔と会っている時に話題にはしたくない。私は私。…奥さんは奥さんだ。

「解らないなんて…嘘だな。どんな関係性でも薄々気付いてるだろ。
佳織だって、気付いてると解ってるだろ?」

「解らない。解らないわ…。でも離れられない。やっと帰って来たのよ?
帰ってまだ一年も経ってないのに…。会いたいに決まってるじゃない。会いたいって言われたら…言われなくても会いたいに決まってるじゃない」

つぅっ…。

「…会っては駄目だ。俺が知った以上…会いに行かせない」

好きなのは解っている。離れていた分、余計求める気持ちも解る。大人になって改めて始まった恋と同じだ。
だけど、これ以上、辛いだけの関係になって行くのを見ていられない。ただ好きでつき合ってるのとは、もう違う。相手は妻帯者になったんだ。
どうしようもなくなった時、別れが来る。今よりもっと酷い状態になってしまうだろう…。
佳織は心を壊してしまうだろう。

「…無理よ。そんなの無理に決まってる。
24時間、私を見張るの?仕事があるのに?
そんなの出来る訳ない。だからいいの。もう放っておいて」

「放っておけない。今更放ってなんかおけない」

俺はずっと護る事、約束させられたままなんだ。
…なのに、…何だよ。依頼した奴が佳織をこんな目に合わせてるなんて。
解っていたことだとは言え…。やはり辛い選択だったんじゃないのか…。
色んなことを考えて小さい傷が積み重なって来るだろう。
堪えられるのか?佳織…。弱いくせに強がって…。
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