それが伝え方なのです



もっぱら恋愛相談的なものはしてたし、初めて静くんを紹介したときも初っ端からグーサイン出すぐらいにお母さんは静くんのことが気に入ったみたい。彼女としては複雑である。


お父さんについては…なんとも言えないんだけどね。でも静くんの雰囲気って嫌いになれないというか、いつの間にか浸透してるというか。態度ほど嫌いじゃないと思いたい。



「ごめんね、静くん…」



風邪を引いたことも、約束を破っちゃったことも、こうしてわざわざ心配して見に来てくれたことも。



「せっかくの、記念日だったのに…おいわい、したかったのに…」



わたしのせいで全部パーになっちゃった。一度考えてしまうと熱で弱っているせいかネガティブな思考でいっぱいになってじわじわと視界が滲んでくる。


わたしのせいなんだからわたしが泣くのはおかしいのにやっぱり悲しくて申し訳なくて悔しくて、せめて泣き顔が見られないように頭まで布団を被った。


むわっとした空間の中ですん、と鼻をすする音が篭る。



「やよ」



ぽんぽんと布団の上から優しく手が乗せられた。ちょうど頭の上で撫でられてるみたい。



「俺はやよと一緒にいられたらそれでいいよ。いつも会えないとき多いから」



ぽん、ぽん、と子どもを寝かしつけるみたいな一定のゆっくりしたテンポの振動になんだかホッとしてしまう。



「で、も…残念じゃない?」


「そうだね。でもお祝いは元気になって時間のあるときにできるから、それを楽しみにできるでしょ?」




< 109 / 127 >

この作品をシェア

pagetop